先日,南極調査で使う特別仕様のテントについてメーカーさんと打ち合わせをしました.
極地研にいらして下さったのは,「THE NORTH FACE」を取り扱っているゴールドウィンの担当者さんです.
これまでもご紹介しているように,僕らの南極調査は昭和基地から遠く離れたセールロンダーネ山地という内陸山地で行います.そして,約三ヶ月間にわたる調査のほぼ全期間をテント泊で過ごします.調査期間は南極の夏なんですが,やはりしばしば天候は崩れますし,時にはブリザードも発生してキャンプ地を襲います.ですから,テントと言っても一般的な仕様のものでは歯が立ちません.
そこで,僕らの調査では「THE NORTH FACE」さんのDome-5やDome-8という,ヒマラヤ登山隊もベースキャンプとして使う特別仕様のテントを使っています.また,フィールドスペシャリストの阿部幹雄さんを中心に,過去数年前の使用実績をメーカー側にフィードバックして,これらのテントに南極特別仕様としてさらなる改良も加えています.今回の打ち合わせでは僕も参加した一昨年の調査での経験をさらにフィールドバックして,今年度調査仕様のテントの製作について相談させて貰いました.
しかし,南極の自然は僕らの想像を簡単に超えていきます.
前回の調査では,僕を含めたわずか3人の調査グループが猛烈なブリザードに襲われまして,この南極特別仕様のDome-5が完全に破壊されてしまいました.
このときのブリザードは,風速で最大30 m以上に達していたと思われ,各自の個人テント(VE-25)から出られない状況が4日間続きました.
下はこのときに破壊されたDome-5です.
幸い,調査期間の終盤であり,また大切な物資はより安全な場所に避難させておいたので大事には至りませんでしたが,「南極での家」であり心の拠り所のベースキャンプが壊れてしまったというのはショックでした.
更に,天候が回復した後に周辺をチェックすると,かなり遠方までスノーモービルが吹っ飛ばされているのを発見.200 kgぐらいはありそうな車体が相当な距離を運ばれて,さらに横転までしています.
うーん,ブリザードはやはり本当に怖い..
このブリザードの最中,最年少の隊員は個人テントの中で遺書を書いていたそうです.
まあ今では笑い話ですが,気持ちはわからないでもないですね.
ちなみに,Dome-5テントの名誉の為にお伝えしておきますと,
テントにとって南極での最大の敵は紫外線です.
信じられないことですが,南極の夏期間はオゾンホールの影響もあって,尋常でない量の紫外線が降り注ぎます.その影響で,テントの生地がどんどん劣化していくのが毎日見ていて分かるほどです.このブリザードの時も,既に調査期間の終盤に差し掛かっており,テントの生地が既にかなり傷んでいたというのが,この大破壊の大きな原因と言えます.
まあ,今年の調査ではこういった目に遭わないように,万全の準備をしなきゃですね.
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