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海外でも日本がマイナンバー導入というニュースを耳にしている方も多いのではないかと思いますが、実際に海外在住者でどのような影響があるのか?あまり真剣に考えていなかったのですが、よくよく調べてみると結構面倒なことが発生してきそうです。現在いろいろな情報がインターネット上を飛び交っており、海外在住者はマイナンバーは発行されない。海外在住者の短期一時帰国では取得できない。年金がもらえない。医療が受けられないという記事を目にします。しかし手順を見てみるとそのようなことはなさそうです。
マイナンバーとは、アメリカでいうSSN(ソーシャルセキュリティー)と同じようなもので社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人情報が同一人物の情報であることを確認するためのものです。基本的に現在の日本の国民管理方法は全ての管轄において共通の個人番号がないため非常に非効率的であるために、一括して個人情報を管理するのが大きな目的のようです。
アメリカの個人番号カード(SSNソーシャルセキュリティー見本)
マイナンバーは、2015年10月5日時点で日本国内に住民票がある人全員に自動で発行されます。(手続き不要、新生児、外国人にも発行されます)しかし、2015年10月5日の時点で住民票を抜いている方には、マイナンバーは自動で発行されません。
つまり日本国民であっても、パスポートを保持していてもマイナンバーの手続きは海外からは行うことができず、あくまでも住民票がない限り発行されないということになります。
私たち海外在住者が一番身近で影響するのは、帰国時の医療費ではないかと思います。アメリカの歯の治療費は高額、かつ技術が低いため帰国時に歯の治療を済ませる方は多くおられます。従来であれば住民票を戻し、国民健康保険証を取得し医療機関に提示することで利用できたものですが、マイナンバー導入により健康保険証がマイナンバーと紐付けされるため実質健康保険証はなくなり、かわりにマイナンバーを医療機関に提示し受診をするという形になってきます。つまりマイナンバーがないと健康保険が使えないという自体が起きてくる可能性があるのです。
マイナンバーがないと困るのは健康保険証だけではありません。銀行などの金融機関で口座を開講する際にはマイナンバーの記載が必要となります。(当面は任意、2021年以降は義務化の可能性があります)また、海外居住者で住民票を抜いている方が、日本で開設した銀行口座をそのまま利用されている場合、2016年1月1日以降は、この銀行口座を利用した海外送金(送金・受領の両方)に制約がかかる可能性があります。例えば、1回の海外送金が100万円を超える場合、日本の銀行は税務署に「国外送金等調書」を提出する義務があるのですが、マイナンバー制度の開始によって2016年1月1日以降の海外送金については、「国外送金等調書」にマイナンバーの記入が求められることになったためです。
上記が金融機関が税務署に提出を義務化されている「国外送金等調書」です。赤で囲まれた部分にマイナンバー(個人番号)を記入しなくてはなりません。つまり送金時にこのマイナンバーの提出が必要になってきます。
また日本、海外の両方で収入があるかたの税金の申告時や、将来的に日本からの年金などの受け取りにもマイナンバーが必要になります。多くの公共の場でマイナンバーの提示を求められることが多くなりそうですので日本と関わりがある場合は何かと持っていないと不便な場面に遭遇してくると思います。
基本的に現時点では日本ではマイナンバー発行の混乱期ですので仮に冬に帰国し住民票を戻しても滞在中にマイナンバーが発行されるかわかりません。一時帰国の場合はどのタイミングで住民票を抜けば良いか(出国してしまいますと自分では手続きができなくなりますので)この点が難しい点です。住民票が入った時点で手続きがされるのであれば一時的な帰国でも発行はされると思いますが、多くの海外在住者の方はお子さんの冬休み、夏休みなどを利用して帰国されると思いますのでこの期間中に発行されるかという部分が重要な点です。
現在日本在住者への発行プロセスを見てみると、2015年10月5日以降、住民票の登録住所に役所から下記の書類が自宅に自動で送られてきます。
1.通知カード(世帯人数分)
2.個人番号カード交付申請書(世帯人数分)
3.ご案内(1通につき1部)
4.個人番号カード交付申請書の送付用封筒(1通につき1部)
ここで重要なのが、1、2の部分です。基本的に必要なのは通知カードだけです。通知カードというのはまさにSSNのカードのようなイメージで、紙に数字が明記されているだけのものです。
通知カード見本(市役所から抜粋)
この番号がマイナンバーというもので今後様々な公共期間で提示を求められる数字になります。実はこの番号さえあれば全く問題がない訳です。多くの情報では取得まで数カ月かかる、写真が必要、ということで一時帰国ではマイナンバー取得は難しいとされていますが、実はそれは2の個人番号カードのことを指しています。
個人番号カード見本(市役所から抜粋)
1の通知カードには数字と名前と住所が明記されておりますが、写真がありません。つまりこのカード1つでは本人確認ができないために写真付きの個人番号カードを申請するようになります。しかしこれはあくまでも任意ですので強制ではありません。
また個人番号カードを申請する場合は、
住民票を戻す。後日、自宅に上記の書類が届く。指定された写真とともに役所に返送。数ヶ月後、発行完了通知が届き次第本人が直接役所に受け取りに行く。
というプロセスが必要になります。現時点での日本在住者の個人番号カード受理期間が翌年1月(3ヶ月程度)となっているのです。つまり数カ月の滞在をしなければ個人番号カードまで手にすることができないということです。
しかし個人番号カードは、あくまでも任意のカードです。つまりこれがなくても通知カードさえあれば全く問題は生じてきません。
通知カードには写真がないため、このカードにパスポート、運転免許証など顔写真で身分を証明するものがあれば全く同様に利用できます。
つまり帰国時に一度住民票を戻しておくという手続きだけ行っておけば長期滞在する必要はなくマイナンバーは自動的に発行されるということになります。
一旦このマイナンバーが発行されればその後は住民票を抜いてもマイナンバーは一生維持されます。つまり現時点では新しい制度導入のため、発行対象を日本住民としているため海外在住日本人は発行対象の除外となっているだけですので、住民票さえ戻せば自動的に発行されるということになります。
一度発行されたものは一生無効になりませんので帰国後もその番号を提示することで今まで通り健康保険証として使うことができるということになる訳です。ですのでこのマイナンバーだけ発行されれば海外在住者のかたでも今までと同様に医療も金融機関も公共機関も利用できるようになります。
追記 10/14/2015:
サンフランシスコ領事館に直接海外在住者のマイナンバーについてお尋ねしたところ、現時点では海外在住者がマイナンバーを持たなくても特に支障はないため、特に対応は取っていないということでした。
日本からは海外在住者へのマイナンバー発行においての特別な措置は取られず、海外在住者が日本に住民票を戻した時点に発行されるという手順になるそうです。発行時期は自治体によって方針が違うそうなのでご自身の管轄の自治体にお問い合わせくださいということでした。