蠟の羽と心の影。

昔と今を比べ、未来を予想し、拭いきれない不安に心を鷲掴みされているボクら。

遠い世界と手をつなぎ、近い世界はぼろぼろと崩れ始めている世界。

いったいなにが普通なんだろう、、、時折大きな時間の流れに疑問を抱く事がある。

ボクらが望んでる”普通”など所詮５０年も経てばガラリと変わるし、１００年前まで今とは全く違う流れの中で人は生きていた。考え方も生活もファッションも社会もヒトの在り方もその時その時代に生きていた人にしかわからない感覚のものばかり。結局うたかたの存在でしかないのに依存性の強いそれは、理想と現実をギクシャクさせ、ますます不安を募らせる。

たとえ今自分が辛い状況にいたとして、絶えず誰かと比べたりして憂鬱になったとして、それは今も昔も必ず誰かが経験してる事。決して自分が特別不幸だというわけでもない。生きたくても生きられなかった人が過去何人いたかなんて野暮な話持ち出すときりがないけど、当然幸せな人のすぐ横には不幸な人もいることをわかっていなくてはいけない。

”普通”なんてものは昔からなかったんだ。頭の中で作り出された幸せな要素だけをいつしかボクらは”普通”だと認識して、それ以外はただイレギュラーな要素でしかないんだ。

世界を見ると
明日はどんなドレスで身を包んで、どんな料理を食べようかを考えるのが普通だと思っている人もいれば、明日食べるものがあるかどうかを悩むことを普通だと思ってる人もいる。
そのギャップに目を瞑ったまま悲観的になりすぎる事がなにより辛い。

どうして上ばかり見るの？
高い空に憧れすぎて地上をないがしろにしてしまったら、心と身体のバランスが保てなくなるのに。
鏡に映った自身の姿を、なぜそんなに簡単に否定してしまうの？

いつしか地上にも戻れなくなって、高い空もさらに遠ざかって、良い風に捉えてた心も無くしてしまって、しまいには還る器も無くしてしまうのに？悪い意味でまるでイカロスみたい。鑞（ロウ）で固めた鳥の羽で空を飛び、太陽を目指したけれど途中で鑞（ロウ）が溶けて落ちてしまったあの話。結局たどり着く事も帰る事も出来ないまま海に落ちてしまうなんて酷だよ。

とても悲しい。いや、虚しいという方が合っているかもしれない。
満面の笑みで冗談を喋っていても、心の中では笑っていない時があるもの。
それは、上を見すぎた人の心が痛いほどわかってしまうから。

誰もが影を持って生きている事に気がついてほしい。
誰もが影を持って生きている事に、気づいていない間だけが最も幸せな時であり、最も不幸せな時でもあるとボクは思う。それは、その間の自分は悲劇の主人公であり、だれもこの想いはわからないだろう、、、。そんな感情が自分を正当化させる唯一の武器でもあり、最大の弱点であるから。
別の誰かも同じように影を抱いている、そんな風に考えられるようになると、世界の見方は少し変わるかもしれない。

ああ、自分の悩みなんてあの人に比べればなんて小さなものなんだろう、、、そんな風になればベスト。そうでなくても悲劇の主人公は自分だけじゃないということに気づく事ができれば、相手の痛みを理解したうえで自分への解決策も見つかる可能性だって生まれる。

ボクはもうすでに、過去同じ時を過ごした人を不可避な事象も含め何人か無くしているけれど、その人にとっては終わりでもボクらにとっては始まりであることをあらためて知ったね。
誰かを無くすのって、理屈ではわかっていても、簡単に割り切れるものじゃないよ。他の人はどうかなんて知らないけどさ、少なくとも忘れるなんてこと出来たもんじゃないよね。

数年前大好きだったおばあちゃんがこの世を去った時の感情、今でもちゃんと覚えてる。いつの間にかいなくなっちゃった人の事も、話を聞いた時のショックはちゃんと残ってる。もちろん、それを経験した事は悪い事ばかりじゃないけど、できれば急にいなくならないで欲しいな。

ボクだって今、周りに人はいっぱいいるし楽しいけど、常に孤独があったりして”普通”じゃない自分が嫌だったりもする。でも、そんなことでは自分をやめたくない。

正直まだ２０年しか生きていないけど、この経験や考えというのは決して年数じゃない。その時その時の感情が今を作り出してるから。小さい頃からのコンプレックスを今でも持ってるしね、人の痛みがわかって仕方ない。友達が毎日悩んだ顔してるのとか嫌だわ。

なんで１人で抱え込んで１人で解決しようとするのかな、、、
世の中そんな人でいっぱいだよ、、、、